泉田裕彦知事が10月30日の記者会見で、自身が視察したウクライナ・チェルノブイリ原発での被ばく放射線量は事故を起こした東京電力福島第1原発の「千分の1」だとした発言が波紋を広げている。史上最悪とされる原発事故を起こしたチェルノブイリ原発より福島原発の方が危険だと取られるためで、インターネットのツイッターでは「誤解を与える」と批判が相次いだ。福島事故の影響を調べている専門家は「福島の差別につながりかねない」と指摘している。
知事は事故から30年近くたつチェルノブイリ原発を10月19日に視察したが、2011年3月に事故を起こした福島第1原発には行っていない。福島事故に関連して東電や原子力規制委員会を厳しく批判しつつ現地視察には赴かないことに、県議会などでは「なぜか」と疑問の声が出ていた。
30日の記者会見でも福島原発視察の意向を問う質問が出され、これに対して知事は「県から(福島第1原発に)派遣した調査委員の先生方は、1日で8ミリシーベルト被ばくしている。チェルノブイリ原発に行っても(被ばく線量は福島第1原発に比べ)千分の1だ」と発言。
さらに福島事故の収束作業で15・7ミリシーベルトの被ばくをした後に白血病を発症した男性が労災認定された事例などを説明した上で、「ただ漫然と見に行くことがいいのかどうか」と、視察に慎重な姿勢を示した。
こうした発言を報じた新潟日報の記事を引用する形で、波紋が広がった。
ツイッターでは「福島原発の視察がチェルノブイリ原発の視察よりもずっと危険であるかのような誤解を与える」との意見が出た。
福島第1原発1号機の炉心に近い場所に入った県の技術委員の被ばく線量と、炉心には近づけないチェルノブイリの被ばく線量とを単純に比べることは「不適切」との批判が上がる。
「被ばくとの因果関係が証明されなくとも労災認定される白血病の例を挙げ、視察のリスクとする発言も誤解と差別を広げる」との訴えも載った。
知事の発言について、社会学者の開沼博・福島大学特任研究員は「被災者の神経を逆なでするものだ。福島への差別にもつながりかねない。福島の被災地を利用している」と懸念する。
発言が波紋を広げたことについて、新潟日報が今月5日の記者会見で知事に所感を聞いたが、明確な回答は得られなかった。
■10月30日の記者会見(要旨)
記者 原発事故の原因や教訓がつまびらかにならないと視察に行っても仕方ないと。
知事 数字で言うと、チェルノブイリ原発は放射能をしっかり管理していることもあると思うが、いろいろ見させてもらって、メーターや人によって若干異なるものの、被ばく線量は8マイクロシーベルト程度だと思う。県から(福島第1原発に)派遣した調査委員の先生方は、1日で8ミリシーベルト被ばくしている。チェルノブイリに行っても、その千分の1だ。白血病を発症された人は、累積で19ミリシーベルトぐらいだったと思うが、白血病の労災認定がされているということだ。ただ漫然と(福島第1原発を)見に行くことがいいのかどうかという判断が当然にあるのではないか。
記者 (福島第1原発は)まだ被ばくの危険性が高いので簡単に行けるものではないという趣旨か。
知事 言葉の通りで、それ以上のものはない。リスクをどう考えるのかというと、ご存じの通り学説もいろいろある。例えば、以前はしきい値はないと教えられていたと思う。そもそも100ミリシーベルト以下は全く影響がないという話が出てきているが、放射線自体は必ず影響があるという話もあって、決着は付いていないと。100ミリシーベルト以下でも労災認定がなされているという現実がある中で、さまざまな要素も含めて総合判断が必要だろうということだ。
知事は事故から30年近くたつチェルノブイリ原発を10月19日に視察したが、2011年3月に事故を起こした福島第1原発には行っていない。福島事故に関連して東電や原子力規制委員会を厳しく批判しつつ現地視察には赴かないことに、県議会などでは「なぜか」と疑問の声が出ていた。
30日の記者会見でも福島原発視察の意向を問う質問が出され、これに対して知事は「県から(福島第1原発に)派遣した調査委員の先生方は、1日で8ミリシーベルト被ばくしている。チェルノブイリ原発に行っても(被ばく線量は福島第1原発に比べ)千分の1だ」と発言。
さらに福島事故の収束作業で15・7ミリシーベルトの被ばくをした後に白血病を発症した男性が労災認定された事例などを説明した上で、「ただ漫然と見に行くことがいいのかどうか」と、視察に慎重な姿勢を示した。
こうした発言を報じた新潟日報の記事を引用する形で、波紋が広がった。
ツイッターでは「福島原発の視察がチェルノブイリ原発の視察よりもずっと危険であるかのような誤解を与える」との意見が出た。
福島第1原発1号機の炉心に近い場所に入った県の技術委員の被ばく線量と、炉心には近づけないチェルノブイリの被ばく線量とを単純に比べることは「不適切」との批判が上がる。
「被ばくとの因果関係が証明されなくとも労災認定される白血病の例を挙げ、視察のリスクとする発言も誤解と差別を広げる」との訴えも載った。
知事の発言について、社会学者の開沼博・福島大学特任研究員は「被災者の神経を逆なでするものだ。福島への差別にもつながりかねない。福島の被災地を利用している」と懸念する。
発言が波紋を広げたことについて、新潟日報が今月5日の記者会見で知事に所感を聞いたが、明確な回答は得られなかった。
■10月30日の記者会見(要旨)
記者 原発事故の原因や教訓がつまびらかにならないと視察に行っても仕方ないと。
知事 数字で言うと、チェルノブイリ原発は放射能をしっかり管理していることもあると思うが、いろいろ見させてもらって、メーターや人によって若干異なるものの、被ばく線量は8マイクロシーベルト程度だと思う。県から(福島第1原発に)派遣した調査委員の先生方は、1日で8ミリシーベルト被ばくしている。チェルノブイリに行っても、その千分の1だ。白血病を発症された人は、累積で19ミリシーベルトぐらいだったと思うが、白血病の労災認定がされているということだ。ただ漫然と(福島第1原発を)見に行くことがいいのかどうかという判断が当然にあるのではないか。
記者 (福島第1原発は)まだ被ばくの危険性が高いので簡単に行けるものではないという趣旨か。
知事 言葉の通りで、それ以上のものはない。リスクをどう考えるのかというと、ご存じの通り学説もいろいろある。例えば、以前はしきい値はないと教えられていたと思う。そもそも100ミリシーベルト以下は全く影響がないという話が出てきているが、放射線自体は必ず影響があるという話もあって、決着は付いていないと。100ミリシーベルト以下でも労災認定がなされているという現実がある中で、さまざまな要素も含めて総合判断が必要だろうということだ。
2015/11/09 09:59 記者会見する泉田裕彦知事=5日、県庁